業務マニュアルが読まれない原因と、今日から直せる書き方

  • #業務マニュアル
  • #業務効率化
  • #属人化解消
  • #引き継ぎ
  • #社内ナレッジ

「マニュアルはあります」と言いながら、結局あなたが聞かれている

共有フォルダのどこかに、作りかけの手順書が眠っている。新しく入った人に「ここを見てね」と場所を教えたのに、翌日にはチャットで同じ質問が飛んでくる。これは、読む気がない相手のせいではありません。一度でも実態と違う記述に当たった人は、その資料を「確認のために開く場所」ではなく「間違っているかもしれない紙」として扱うようになります。信用を失うのは早く、取り戻すのは遅い。

もう一つ、探せないという問題もあります。フォルダの階層が深く、似た名前のファイルが何世代も並んでいると、探す数十秒が惜しくなって人に聞いた方が早くなる。読まれない原因の多くは、中身の出来より前の段階にあります。

手順は書けているのに、判断が書かれていない

よく書かれているのは「何を」「どの順番で」やるか。抜け落ちるのは「どういうときに、どう分けるか」です。

たとえばECの受注対応なら、通常の出荷手順は誰でも書けます。困るのは、住所が途中までしか入っていない注文、発送準備後のキャンセル依頼、同梱を希望された二重注文。Web担当の業務でも同じで、CMSの更新手順は書けても、公開直前に原稿の数字が変わったときに差し替えてよいのか、上長に戻すのかが書かれていない。だから結局、分かっている人に聞くことになります。

判断を書くときは、次の三つを一組にして一行ずつ足していくと形になります。

  • どういう状態のとき(条件)
  • こちらでどう処理するか(対応)
  • ここから先は誰に確認するか(自分で決めない線)

文章は飾らなくてかまいません。「入金済みで、まだ出荷指示を出していない注文のキャンセルは、自分で取消処理をして定型文で返信。出荷指示後なら取消せず、店長に連絡してから返信する」。この一文があるだけで、経験の浅い人がベテランを呼ぶ回数は目に見えて減ります。金額が変わる、お客様に謝罪が必要、外部の取引先に連絡する。この三つのどれかに触れるものは「確認する側」に寄せておくと、線引きで迷いません。

更新は「月に一度の作業」ではなく「聞かれた瞬間」に起こす

更新担当を決めて月次で見直す、という計画はたいてい続きません。通常業務が立て込めば後回しになり、半年放置された時点で誰も見なくなる。

続けやすいのは、質問が来た瞬間を更新のきっかけにするやり方です。チャットで聞かれたら、答える前に該当のページを開く。そこに回答をそのまま一行足してから、「ここに書いておきました」とリンクを添えて返す。手間は二十秒ほど増えるだけですが、同じ質問への二度目の回答がなくなります。文体が揃っていなくても、書いた日と書いた人の名前が行末に入っていれば十分に使えます。むしろ、口頭で答えた言葉のままの方が読む側には分かりやすい。

引き継ぎ資料も同じ要領で作れます。退職や異動が決まってから一気に書こうとすると、どこまで書けばいいか分からなくなる。日々の質問への回答を溜めておけば、それがそのまま引き継ぎの材料になります。

読まれているかどうかは、質問の回数で測れる

閲覧数が分からなくても、確かめる方法はあります。同じ質問が来た回数をメモしておくこと。二度目が来たら、その内容は本文に埋もれているか、そもそも書かれていない。三度目が来たら、見出しになっていないと考えていい。

見出しは、現場で使われている言い回しに寄せます。「返品処理」よりも「お客様から返したいと言われたとき」の方が、困っている人の頭に浮かぶ言葉に近い。検索で引っかからないのは、内容ではなく見出しの言葉がずれているせいであることが多いのです。

あわせて、書かないという判断も持っておきたいところ。年に一、二回しか発生せず、毎回条件が変わる業務を丁寧に文書化しても、次に使うころには前提が変わっています。そういうものは手順書にせず、入力フォームの注意書きやチェックリストの項目に埋め込む。作業の途中で必ず目に入る場所に一行置いた方が、独立したファイルより読まれます。

まとめ

今週チャットや口頭で聞かれた質問を、一件だけ選んでください。そのときに自分が返した回答文をコピーして、マニュアルの該当箇所に貼り、日付と名前を添える。全体を作り直す前に、この一件から始めるのが一番早く効きます。

業務の流れの整理や手順書の書き起こし、FAQの作成をお手伝いすることもできます。社内の聞き取り内容を、迷わず読める形にまとめるところからご相談いただけます。